内定採用取消しの判例
<判例>
Xは、昭和44年8月にY公社の社員公募に応じ、一次・二次試験に合格し、同年11月に近畿電通局長名義の採用通知を受領した。
同通知には、Xを昭和45年4月1日付けでYにおいて採用すること、入社前に再度健康診断を行ない異常があれば採用を取消すことがあること、などが記載されていた。
Xは、所定事項を記載して期日までに近畿電通局長に送付した。
Xは、高等学校卒業後、反戦青年委員会に所属し、昭和44年10月に大阪鉄道管理局前において開催された集会に参加し、警察機動隊によって公安条例違反および道路交通法違反の現行犯として逮捕され、同年12月に起訴猶予処分を受けた。
Yは、昭和45年3月初旬、Xが逮捕・起訴猶予処分を受けた事実を探知するに至った。
Yでは、反戦青年委員会に関係する職員によって業務が阻害されたことがあり、近畿電通局長はXに対し、採用を同月20日付で取消す旨の通知をなした。
そこで、Xが採用取り消しの無効を主張しYの従業員たる地位を有することの確認を求めた。
地裁、高裁とも、採用内定の取消を有効としたため、Xが上告したのが本件である。
「YからXに交付された本件採用通知には、採用の日、配置先、採用職種及び身分を具体的に明示しており、・・・XがYからの社員公募に応募したのは、労働契約の申込であり、これに対するYからの右採用通知は、右申し込みに対する承諾であって、これにより、XとYとの間に、いわゆる採用内定の一態様として、労働契約の効力発生の始期を右採用通知に明示された・・・労働契約が成立したと解するのが相当である。
・・・そして、右労働契約においては、Xが再度の健康診断で異常があった場合または誓約書等を所定の期日までに提出しない場合には採用を取り消しうるものとしているが、Yによる解約権の留保は右の場合に限られるものではなく、Yにおいて採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる場合をも含むと解するのが相当であり、本件採用取消の通知は、右解約権に基づく解約申し入れとみるべきである」。
「違法行為を積極的に敢行したXを見習社員として雇用することは相当ではなく、YがXが見習社員としての適格性を欠くと判断し、本件採用の取消をしたことは、解約権留保の趣旨、目的に照らして社会通念上相当として是認することができるから、解約権の行使は有効と解すべきである」。
(電電公社近畿電通局事件 最二小判昭和55・5・30 民集34巻3号)
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