産前産後休業を欠勤扱いの判例
<判例>
学校法人Yの従業員Xは、産後8週間休業し、その後引き続いて、子が1歳になるまでの間、1日につき1時間15分の勤務時間短縮措置を受けた。
Yは、就業規則たる給与規程において、出勤率が90%以上であることを賞与の支給要件としたうえで(本件90%条項)、例えば平成6年度末賞与については「(基本給×4、0)+職階手当+(家族手当×2)−(基本給÷20)×欠勤日数」の計算式により、各従業員の賞与の額を算定しており、この時、産前産後休業及び勤務時間短縮措置も欠勤と評価していた。
Yは、休業等により本件90%条項を含む賞与支給要件を満たさないとしてXに対して平成6年度末賞与及び平成7年度夏期賞与を支給しなかったため、Xは、本件90%条項等を定める就業規則の規定が労基法65条、67条、育児休業法10条の趣旨に反し、公序に反する等と主張して、Yに対し上記各賞与の支給等を求めて訴えを提起した。
第一審・控訴審がXの請求を一部認容したため、Yが上告した。
「本件90%条項は、労働基準法65条で認められた産前産後休業を取る権利及び育児休業法10条を受けて育児休業規程で定められた勤務時間の短縮措置を請求し得る法的利益に基づく不就労を含めて出勤率を算定するものであるが、・・・労働基準法65条及び育児休業法10条の趣旨に照らすと、これにより上記権利等の行使を抑制し、ひいては労働基準法等が上記権利等を保障した趣旨を実質的に失われせるものと認められる場合に限り、公序に反するものとして無効となると解するのが相当である」。
本件90%条項がもたらす賞与不支給という不利益の大きさ、基準とされている90%という出勤率の高さを考慮すれば、本件90%条項のうち、産前産後休業の日数及び勤務時間短縮措置による短縮時間分の取扱に関する部分は、「上記権利等の行使を抑制し、労働基準法等が上記権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものというべきであるから、公序に反し無効である」。
賞与の額を算定する際に用いられる「各計算式は、本件90%条項とは異なり、賞与の額を一定の範囲内でその欠勤日数に応じて減額するにとどまるものであり、加えて、産前産後休業を取得し、または・・・勤務時間短縮措置を受けた労働者は、法律上、上記就労期間に対応する賃金請求権を有しておらず、Yの就業規則においても、上記不就労期間は無給とされているのであるから」、賞与額算定の際に産前産後休業及び勤務時間短縮措置を欠勤と評価する旨の給与規程は、「労働者の上記権利等の行使を抑制し、労働基準法等が上記権利等を保障した趣旨を実質的に失わせるものとまでは認められず・・・直ちに公序に反し無効なものということはできない」。
(東朋学園事件 最一小判平成15・12・4 労判862)
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