同業他社へ転職で退職金減額の判例
<判例>
Xは広告代理店であり、YはXに入社し、約10年勤務した後、Xを退職した。
Xの就業規則によれば、勤続3年以上の社員が退職したときは退職金を支給することとされ、退職後同業他社へ転職したときは自己都合退職の2分の1の乗率で退職金が計算されることとされていた。
退職にあたって、Yは就業規則の自己都合退職率に基づき計算された退職金64万8000円を受領したが、その際、今後同業他社に就職した場合には、就業規則に従い受領した退職金の半額32万4000円を返還する旨を約束した。
しかし、Yは退職後、同業他社へ入社し、これを知ったXは、支払済み退職金の半額の返還を求めて提訴した。
「Xが営業担当社員に対し退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限することをもって直ちに社員の職業の自由等を不当に拘束するものとは認められず、したがって、Xがその退職金規則において、右制限に反して同業他社に就職した退職社員に支給すべき退職金につき、その点を考慮して、支給額を一般の事項都合による退職の場合の半額と定めることも、本件退職金が功労報償的な性格を併せ有することにかんがみれば、合理性のない措置であるとすることはできない。
すなわち、この場合の退職金の定めは、制限違反の就職をしたことにより勤務中の功労に対する評価が減殺されて、退職金の権利そのものが一般の自己都合による退職の場合の半額の限度においてしか発生しないこととする趣旨であると解すべきであるから、右の定めは、その退職金が労働基準法上の賃金にあたるとしても、所論の同法3条、16条、24条及び民法90条等の規定にはなんら違反するものではない」。
(三晃社事件 最二小判昭和52・8・9 労経速95)
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