労働協約で退職金の変更の判例
<判例>
Xは、Y会社を平成18年12月31日に定年退職した者である。
Yはその職員で構成する労働組合である職員組合との間で、平成17年7月19日、組合員の退職金指数を改定する合意(本件労働協約)を定めた。
在職時に職員組合の組合員であったXは、このため改定後の低い支給率の適用を受けることになり、538万1034円減額された退職金の支給をYから受けた。
Xは、本件労働協約が労働組合の目的を逸脱して締結されたものであって、Xにその規範的効力が及ばないなどと主張して、この差額等を請求した。
第一審では、Xの請求が認容されたため、Yが控訴した。
労働協約の変更が「労働組合の目的を逸脱して締結されたものと認められるか否かの判断にあたっては、労働協約の内容が労働条件を労働者に不利益に変更する結果となることにとどまらず、@当該労働協約が締結されるに至った経緯、A当時の使用者側の経営状態、B当該労働協約に定められた基準の全体としての合理性等を考慮するのが相当である(最高裁平成9・3・27 第一小法廷判決)」。
「Xは、本件労働協約により、退職金が・・・円(約14、2%)の減額になり、その不利益の程度は小さいとはいえない」。
「しかしながら、本件労働協約が締結されるに至った経緯については、職員組合においては、本件改定案について組合員のほとんどが出席した職場集会を3回開催し、Xもこれに毎回出席し、執行部は上記職場集会の結果を踏まえて控訴人との間で団体交渉を2回行った上、平成17年6月29日、臨時大会において本件改定案を受け入れる旨の執行部案が出席者46名の賛成多数で可決され、その後1回の団体交渉を経て、同年7月19日、臨時大会において本件労働協約を締結することが出席者49名の賛成多数で承認された上で本件労働協約が締結されたというのであり、Xも上記議論の過程において意見を言う機会が保障されていたというべきであるから、職員組合における意思決定過程の公正さを疑わせるに足りない」。
「以上の事情に照らせば、本件労働協約が従前の労働条件に比較して労働者に不利なものであり、Xの退職金の削減幅が10ヶ月分を超えることを考慮しても、職員組合としては、民主的な手続によって確認された組合員の意思に基づき、当時の状況の中で本件労働協約の内容を是としたものであって、本件労働協約が特定のまたは一部の組合員を殊更不利益に取り扱うことを目的として締結されたなど労働組合の目的を逸脱して締結されたものと認めるに足りないというべきであり、その規範的効力を否定することはできない」。
(中央建設国民健康保険組合事件 東京高判平成20・4・23 労判960)
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