労働法の判例
<判例>
Aは、在学していた大学の推薦を得て、昭和43年7月5日にB会社の採用面接を受け、同月13日に採用内定の通知を受けた。
そこで、Aは同じく大学から推薦を得ていたA会社への応募を辞退した。
ところが、翌年2月22日、BはAに対して、理由を示さずに、採用内定を取消す旨の通知をした。
そのため、Aは就職先がきまらないまま、同年3月に卒業した。
Aは内定取消しの効力を争い、従業員としての地位確認、賃金請求、慰謝料の請求を行った。
なお、この訴訟の過程で、Bは「Aはグルーミーな印象なので当初から不適格と思われたが、それを打ち消す材料が出るかもしれないので採用内定としておいたところ、そのような材料が出なかった」という内定取消しの理由を明らかにした。
第一審及び原審ともに、Aの請求を認容したために、Bが上告したのが本件である。
本件で「採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかったことを考慮するとき、Bからの募集(申し込みの誘因)に対し、Aが応募したのは、労働契約の申込であり、これに対するBからの採用内定通知は、右申し込みに対する承諾であって、Aの本件誓約書の提出とあいまって、これにより、AとBとの間に、Aの就労の始期を昭和44年大学卒業直後とし、それまでの間、本件誓約書記載の五項目の採用内定取消し事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと解する」のが相当である。
「わが国の雇用事情に照らすとき、大学新規卒業予定で、いったん特定企業との間に採用内定の関係に入った者は、このように解約権留保付であるとはいえ、卒業後の就労を期して、他企業への就職の機会と可能性を放棄するのが通例であるから、・・・使用期間中の地位と基本的には異なるところはないとみるべきである」。
試用期間における解約権の留保に関する判例法理は、「採用内定期間中の留保解約権の行使についても同様に妥当するものと考えられ、・・・採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約件留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である」。
本件のような理由で内定取消を行うことは、解約権の濫用というべきである。
(大日本印刷事件 最二小判昭和54・7・20 民衆33巻)
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