楽団員は労働者に当るか
<判例>
放送事業を目的とするA会社は、B管弦楽団をつくり、楽団員と放送出演契約を締結した。
その契約は、当初は、「専属出演契約」といわれるものであって、これによると、@契約期間(1年。ただし更新される)中、楽団員は、Aが指定する日時、場所、番組内容等に従ってAの放送及び放送付帯業務に出演する義務を負うとともに、A以外の放送及び放送関係業務に出演すること(他社出演)を禁止され、Aその出演報酬として、Aから楽団員に対し、毎月、保障出演料と超過出演料が支払われるが、B契約期間中であっても、正当な理由があるときは1ヶ月の予告期間をおき、また契約違反があるときは直ちに、両当事者において契約を解除することができるものとされていた。
楽団員の他社出演等は自由となったが、Aから出演発注があったときは、楽団員は指定された番組の優先的に出演する義務を負うものとされた。
楽団員らは、C労組を結成し、団交を申し入れたが、Aはこれを拒否した。
D地労委は、Cらの救済申し立てを棄却したため、Cらは取消訴訟を提起した。
一審・二審とも、楽団員の労働者性を肯定し、命令を取消したため、Dは上告した。
「本件の自由出演契約が、・・・楽団員をあらかじめ会社の事業組織のなかに組み入れておくことによって、放送事業の遂行上不可欠な演奏労働力を恒常的に確保しようとするものであることは明らかである」。
「楽団員が会社の出演発注を断ることが禁止されていなかったとはいえ、・・・原則としては発注に応じて出演すべき義務のあることを前提としつつ、ただ個々の場合に他社出演等を理由に出演しないことがあっても、当然には契約違反等の責任を問わないという趣旨の契約であるとみるのが相当である。
楽団員は、演奏という特殊な労務を提供する者であるため、必ずしも会社から日々一定の時間的拘束を受けるものではなく、出演に要する時間以外の時間は事実上その自由に委ねられているが、右のように、会社において必要とするときは随時その一方的に指定するところによって楽団員に出演を求めることができ、楽団員が原則としてこれに従うべき基本的関係がある以上、たとえ会社の都合によって現実の出演時間がいかに減少したとしても、楽団員の演奏労働力の処分につき会社が指揮命令の権能を有しないものということはできない。
また、・・・楽団員は、いわゆる有名芸術家とは異なり、演出についてなんら裁量を与えられていないのであるから、その出演報酬は、演奏によってもたらされる芸術的価値を評価したものというよりは、むしろ、演奏という労務の提供それ自体の対価であるとみるのが相当であって、その一部たる契約金は、楽団員に生活の資として一応の安定した収入を与えるための最低保障給たる性質を有するものと認めるべきである」。
以上によれば、楽団員は労組法上の労働者に当る。
(CBC管弦楽団事件 最一小判昭和50・5・6 民集30)
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