選択定年制の割増退職金の判例
<判例>
Yは、組合員の貯金または定期積金の受入等を目的として設立された信用農業協同組合である。
Yは、就業規則で「従業員は満60歳をもって定年」と定め、選択定年制を設け、割増退職金を支給することを規定し、同制度の適用にはYの承認が必要とされた。
X1とX2は、それぞれ昭和46・48年にYに雇用され、平成13年、選択定年制により退職することを希望する旨の申出をした。
Yは、平成13年8月、経営悪化から事業譲渡及び解散が不可避となったと判断するに至り、選択定年制を廃止するとの方針を立てた。
Yは平成13年9月、有資格者全員に対し、「選択定年制は廃止せざるをえない」という趣旨の説明を行い、大方の賛同を得た。
その時点で、X1のほか3名が本件選択定年制による退職の申出をしており、その後にX2のほか2名が選択定年制による退職の申出をした。
Yは、平成13年9月の理事会において、経営悪化から事業譲渡及び解散が不可避となったとの判断のもとに、事業を譲渡する前に退職者の増加によりその継続が困難になる事態を防ぐため、選択定年制による退職の申出に対しては、すでにされているものについても承認をしないことと、本件選択定年制を廃止することを決定した。
Yは、平成14年1月の総会において、同年4月1日限りその事業の全部を訴外A組合に譲り渡して解散することを決議し、同年3月31日、全従業員を解雇した。
Xらは、選択定年制により退職したものと取り扱われるべきであると主張して、Yとの間において、本件要項の定める金額の各割増退職金債権を有することの確認を求めた。
地裁・高裁とも、Xらの請求を認容し、Yが上告したのが本件である。
「本件選択定年制による退職は、従業員がする各個の申出に対し、Yがそれを承認することによって、所定の日限りの雇用契約の終了や割増賃金債権の発生という効果が生ずるものとされており、Yがその承認をするかどうかに関し、Yの就業規則及びこれを受けて定められた本件要項において特段の制限は設けられていないことが明らかである。
もともと、本件選択定年制による退職に伴う割増退職金は、従業員の申出とYの承認とを前提に、早期の退職の代償として特別の利益を付与するものであるところ、本件選択定年制による退職の申出に対し承認がされなかったとしても、その申出をした従業員は、上記の特別の利益を付与されることこそないものの、本件選択定年制によらない退職を申し出るなどすることは何ら妨げられていないのであり、その退職の自由を制限されるものではない。
したがって、従業員がした本件選択定年制による退職の申出に対してYが承認をしなければ、割増退職金債権の発生を伴う退職の効果が生ずる余地はない」。
(神奈川信用農業協同組合事件 最一小判平成19・1・18 労判931)
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